J・エドガー


a0144181_1114480.jpgえー、久しぶりに観た映画の感想書きます。今回、観たのはクリント・イーストウッド監督の最新作で、米国FBIの初代長官フーバーの生涯を描いた作品「Jエドガー」であります。

まずは、作品に触れる前に、C・イーストウッドの映画は「ミリオンダラー・ベイビー」以前と、それ以後とでは、その作風が大きく変わってきたことに注目しなければならないということ。

以前のイーストウッド監督の映画と云えば「許されざる者」がそうであったように、何処かアメリカという国家に対する揺るぎない信頼感であるとか、愛国主義的な雰囲気がそこかしこに散りばめられている気がして、作品の出来云々は別にして、正直なところ、そういうところがいささか気の滅入るところでもありました。

そういう意味において「ミリオンダラー・ベイビー」は、彼にとっては、大変エポック・メイキングな作品であったし、その後の、イーストウッドは「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」「グラン・トリノ」等、次々と意欲的な作品に取り組んでいく訳です。

どの作品も皆そうですが、以前の彼の作品とは異なり、一歩下がった醒めた視線で、アメリカ社会を捉え直してみよう、そんな心境の変化が、彼の作品に、より一層の深みと円熟味を与えた気もするのですよ。ことに、頑迷で孤独な老人の”心の変容”を丹念に描き出した映画「グラン・トリノ」は、イーストウッド自身の内面の変化そのものを見事に表現した最高傑作のような気がします。

前置きが長くなりましたが、今回の「Jエドガー」について。これはあくまで個人的趣味の問題ですが、ことに病気を患って以来、バイオレス物や、ゲイを扱った映画が、僕はどうも苦手になってしまいまして。今回ばかりは、作品の出来はともかくとして、この手の映画は生理的にどうも受け付けないのです。もちろん本人の自由だと思うし、同性愛それ自体を認めていないというわけではありませんけどね、男同士のラブシーンって、あまり観たくはないよな。ああ、むしろ女性のほうが、この種の映画、案外抵抗が少ないのかも。苦笑。

歴代の大統領も恐れた陰の権力者、FBI初代長官のフーバーを描いた作品ということもあり、例えばですよ、イーストウッドとよくコンビを組むベテラン脚本家のポール・ハギスが得意とするような、もう少し骨太で硬派のヒューマン・ドラマを期待してしまったせいもあるのでしょうかね?いささか残念。実際のお話はですね、権力の頂点に昇りつめたフーバーという人物の個人の悩みや葛藤、内面をわりと淡々と描いた、ハリウッド映画によくあるような定番ストーリー。

ところがです、内面の苦悩や葛藤を描くとなると、主役であるはずのディカプリオ演じるフーバー長官の印象の弱さが否めないのです。息子を溺愛する母親役を演じるベテラン女優・ジュディ・デンチ、生涯フーバーの片腕として、また愛人でもあったとされる副長官を演じるマーミー・ハマーに、むしろ主役が喰われてる感じがします。本来、レオナルド・ディカプリオは、シリアスな役柄があまり似合わないし、もっと軽妙なタッチの役柄が活きるタイプの役者さんのような気がするのになあ..。

だいぶ前に、やはり彼が主演をして、米国の大富豪、H・ヒューズの生涯を、M・スコセッシが描いた映画「アビエイター」でも、同じような印象を抱いた覚えがある。

あれっ、なんだろう、この後味の悪さって?と思って調べたら、数年前にショーン・ペン主演で、米国初のゲイ政治家を描いた「ミルク」という映画があったのだ。あの映画の製作総指揮を取ったのも、今回の「Jエドガー」の脚本を書いたダスティン・ランス・ブラックだと、はたと気づいて「ははあ、なるほどそうだったか」と思った次第。ちなみに「ミルク」も個人的には後味悪い映画でありました。同じ同性愛をテーマにした映画でも、あの名作「ブローバック・マウンテン」には遠く及ばないぜよ、そんな作品だったからです。

で、結論。物語自体は地味だけれど、それなりに丁寧には創られている。要はアメリカ大好き!神経症になって、毎日精神科のカウンセラーのお世話になっても良いから、権力や地位、名誉もお金も欲しい!そんなタイプのひとにはお勧めの映画。どうしちゃったんだ、とうとう呆けたか、C・イーストウッド..。ということで、今回のお気に入り度は、残念だけど☆
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by tokoro-11 | 2012-02-06 14:36 | 映画 | Comments(0)

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